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9月, 2021の投稿を表示しています

ツェルニー 上  Editor Czerny 1

   私が独学でピアノを始めたのは高校生の時でした。家にピアノが無いので、音楽室に入り浸っていました。  ある時、インベンションの1番を弾いていたら、音楽の先生が、ちょっと楽譜を見せてみなさいと言いいます。そして手に取って眺め、何やら難しい顔をしていました。次の日、これを使いなさいと手渡されたコピーは、一見してスラーの位置が違っていました。 それはブライトコップ&ヘルテルのブゾーニでした。実際にそれに沿って弾いてみると、 スラー、スタッカート、運指が示す、フレーズの区切りが考えぬかれており、完ぺきでした。こまやかな注釈、解説も、とても納得のいくものでした。それに比べると、今まで使っていた、どこにでも売っている(売っていたと言うべきでしょうか。今は一般的ではないようです。)全音楽譜出版の青い表紙のBACHは、アーティキュレーションの指示が、いかにもいいかげんに思えました。何も気にせず、 何も知らずに 買ったのですが、あらためて見直すとツェルニー校訂とありました。 その時以来、私の中ではバッハといえばブゾーニ。そしてツェルニーは最低の評価となったのでした。  時を経て、ピアノを再開した私が選んだのは迷うことなくブゾーニでした。とはいっても、ほどなくチェンバロに転向したので、ブゾーニとの付き合いは束の間で、もっぱらヘンレか音楽之友社の原典版のお世話になっていました。ところが、音楽の捧げもの、3声のリチェルカーレを探した時のこと。これがなかなかありません。ブゾーニどころかヘンレも全音でさえも出ていません。一つだけ見つけたのがベーレンライター。だけど、数ページしかないのに3千円近くもしています。これでもし、やっぱり難しくて弾けなかったなんてことになったらと考えると、購入には二の足を踏んでしまいます。IMSLPにもあたりましたが、誰が打ったのだか、誤記だらけで全く使い物になりません。でなければファクシミリみたいな、とても古いコピー。仕方ないからファクシミリを見ながら自分で打ち直すかと覚悟していたところ、やっと見つけました。 全日本ピアノ指導者協会ミュッセ というところで受注製本してくれるらしい。ただし残念なことに、この版はぺータスからのコピーで、ツェルニー校訂なのでした。  しかし、あきらめで買ったこの譜は、実は驚くべきものでした。   As the edit...

メヌエット ト長調 Minuet G major BWV Anh.114

音楽はバッハに始まりバッハに終わるのではないかと思う昨今。それでは、始まりは何かといえば、アンナ・マクダレーナの音楽帳、ト長調のメヌエット(BWV Anh. 114)あたりはいかがでしょうか。  ところが、バッハ作曲と音楽の教科書にも載っていたこの曲が、研究の結果ペツォールトという聞いたこともない別人の作と判明したという。(古い話で恐縮です)これは驚きでした。そして、信じがたいことでした。だって、何か理屈はあろうとも、その神髄ともいえる美しいメロディーこそが本物のバッハの証しではないかと思うからです。しかし、その作風すらもバッハらしくないというのが理屈の一つだという。  納得いかないままに「どお思う?」と妻に聞いてみたところ、彼女は、いとも容易く「バッハらしくない」という。バッハは好きというが、トッカータとフーガニ短調、小フーガト短調、主よ人の望みの喜びよ、くらいしか知らない彼女が。益々驚いて「一体どこが!」と問うたところ「メロディーが幼稚」と辛辣。特に、同じ音の繰り返しがバッハらしからぬ幼稚さだと言う。即ち、2小節目の2,3拍のソ、ソ。同じく4小節目の「×、ソ、ソ」。その後何度もくりかえす、「×、ソ、ソ」。確かに・・・・・・。  以来、どう聞いてもペツォールトにしか聞こえなくなりました。それは例えるなら、今まで神と信じていたものが、ただの石ころか木片だったと気づいたようなものでした。   Minuet G major BWV Anh.114 is not one of J.S.Bach’s but Christian  Petzold’s. Although I was not convinced, they said that the style was not Bach’s.  Recently I can make out the reasoning. For example, in bar#2 and bar#4, there are two “g”s in a row. And then there are so many two "g"s in a row. This childish style is unlike Bach. It isn't Bach's but rightly Petzold’s. Above...